犬・猫の乳腺腫瘍
犬・猫の乳腺腫瘍 について
どんな病気?
乳腺腫瘍は、乳腺組織が腫瘍化することで起こる病気です。乳腺は個体差があるものの、犬のメスの場合は5対、猫のメスの場合は4対あります。
その乳腺組織の中の小さな「しこり」を乳腺腫瘍といい、その中で悪性のものが乳ガンと呼ばれます。乳腺腫瘍は犬にできる腫瘍の中で最も多い腫瘍で、約50%が悪性と言われています。猫の場合はさらに多く80~90%が悪性です。
また、病気で死んでしまう猫の3割が、乳腺腫瘍が原因と言われています。寿命が延びるにしたがって、腫瘍の発生率も高くなってきていますので、高齢の犬のメスほど注意が必要です。
症状は?
乳腺組織にしこり(腫瘍)ができます。この腫瘍は良性であっても時間の経過とともに大きくなっていきます。
一般的に悪性のものは成長の速度が速く、たった数日間でかなり大きくなってしまうこともあります。
また、腫瘍が成長するにつれて、リンパ節や肺、腎臓、肝臓などに転移します。良性のものであっても徐々に大きくなっていき、動きの妨げになったり、化膿したり、はじけてしまったりするので早期発見、早期治療が大切です。
腫瘍がまだ小さいうちの方が切除する範囲も小さくてすみますので、本人にかかる負担もそれだけ小さくてすみます。腫瘍ができても、最初のうちは特に苦痛もなく、食欲・元気も変化がありません。
日頃から乳腺のあたりを触ってしこりがないかチェックしましょう。
原因は?
発症の原因は明確には分かっていません。ただ、女性ホルモンやその他ホルモン、遺伝的体質があると言われています。
治療方法は?
人間の場合と同じように、腫瘍の治療の第1選択は外科的切除です。術式がいくつかあり、腫瘍の大きさや発生部位、患者の状態によって選択します。
両側乳腺摘出
全ての乳腺を摘出する方法で、腫瘍が両側の乳腺にできているとき、片側にしかできていないが、予防的に反対側の乳腺も摘出する場合に行います。
再発の可能性は最も低いですが、広範囲に切除するため、手術時間が長くなり、術後の皮膚の癒合が悪くなる傾向があります。
片側乳腺摘出
片側の乳腺を全て摘出する方法で、腫瘍が片側だけにできているときに選択されます。
の領域乳腺摘出や単乳腺摘出に比べると切除する範囲が大きいため、比較的手術時間が長くなります。
領域乳腺摘出
腫瘍が1つの乳腺にできている場合に選択されます。腫瘍ができている乳腺と、その乳腺とリンパ管によってつながっている乳腺とを予防的に摘出します。
切除する範囲が比較的小さいため、手術時間も比較的短くてすみます。
単乳腺摘出
腫瘍ができている乳腺だけを摘出します。手術時間は短くてすみますが、隣接した乳腺にリンパ管を介して転移する可能性があります。
手術はかわいそうなんだけど?
確かに、麻酔をかけて体にメスを入れると考えるとかわいそうかもしれませんが、手術を躊躇しているうちに腫瘍が摘出困難なほど大きくなってしまったり、他の組織に転移してしまったり、体力が低下して手術に耐えられなくなる例も少なくありません。
悪性の場合、無処置だと75%が2年以内に死亡するという統計があります。良性でもどんどん大きくなり、頭ほどの大きさになることも珍しくありません。
抗ガン剤や放射線療法もありますが、効果はあまり高くありません。
手術は安全なの?
残念ながら、乳腺腫瘍に限らずどんな手術も100%安全とは言い切れません。
特に乳腺腫瘍の場合は高齢である場合が多いため、リスクはさらに高くなります。このため、手術に耐えられる状態であるか、他に転移がないかを調べるため、術前に血液検査やレントゲン検査、心電図検査などが必要です。
まとめ
今回は、乳腺腫瘍について説明いたしました。腫瘍の治療はとにかく早期発見が鍵です。
様子をみる=がんを放置するということになりかねませんので、お腹のあたりにしこりを見つけたらすぐに診察をしましょう。