猫の肥大型心筋症
猫の肥大型心筋症 について
猫の肥大型心筋症は心臓の筋肉が異常に厚くなる病気です 。猫の肥大型心筋症は猫の15 ~ 30% が罹患していますが、ほとんどの猫が無症状です。心臓の血液を送り出す力が低下して、様々な症状を引き起こしますが、突然死することもあり、先ほどまで元気そうに見えた猫が突然亡くなることがあります。
NEWS:現時点では猫の肥大型心筋症の進行を抑える薬は、販売されておりませんが、ラパマイシンを1週間に1回飲ませるだけで、心臓の筋肉の肥大を抑制するエビデンスがあり、動物薬品の会社がアメリカで臨床試験を始めています。この薬の効果が確立されれば、多くの猫を救うことができるようになります。
このような薬は発売まで通常5年程度かかりますが、多くの要望があるのでアメリカでは早期に発売されるのではないかと言われてます。
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目次
1猫の肥大型心筋症の原因
2猫の肥大型心筋症の症状
3猫の肥大型心筋症の診断
4猫の肥大型心筋症の治療法
5猫の肥大型心筋症はどのくらい生きられますか?
6飼い主様がらやらなければいけないこと
猫の肥大型心筋症:関連NEWS
モアイのイースター島で発見された薬が猫を救うのか
1猫の肥大型心筋症の原因
猫の肥大型心筋症は心筋細胞のタンパク質をコードする遺伝子の変異によって引き起こされます。メインクーンとラグドールの品種の猫における 肥大型心筋症は、心臓ミオシン結合プロテイン C 遺伝子の 2 つの異なる遺伝子変異によって引き起こされます (メインクーンでは A31P、ラグドールでは R820W)。
メインクーンでは、ブリーダーが検査した猫の 30 ~ 40% が A31P 変異を持っており、有病率が 15% に近いです。R820W 変異がホモ接合であるラグドール猫は、正常なヘテロ接合猫よりも 死亡するリスクが高くなります。
猫の肥大型心筋症は、進行するにつれて、心臓の機能が低下します。厚くなった心臓の壁は柔軟性が低下し、血液を満たすために十分に弛緩したり伸びたりすることができなくなります。体液が肺毛細管から肺と胸腔に押し込まれ、肺水腫と胸水を引き起こします。心臓筋肉の肥厚が不整脈を引き起こし、突然死を引き起こすこともあります。大動脈内に血栓ができて、後脚への血流の遮断を引き起こし突然の麻痺や激しい痛みを引き起こし、死に至ります。
2猫の肥大型心筋症の症状
猫の肥大型心筋症は猫が生まれたときには存在しませんが、生後3か月以上の猫であればどの年齢でも発生する可能性があります、老年になるまで発症しないこともあります。
ショートヘア、メインクーン、スフィンクスなどの猫は、他の品種よりも突然死しやすい可能性があります。ノルウェージャン フォレスト キャットは、猫の肥大型心筋症と別のタイプの猫の拘束型心筋症の両方の特徴を持つ心筋症を患っています。
猫の肥大型心筋症は、進行するにつれて、心臓の構造と機能が変化します。猫の肥大型心筋症 の問題は、左心室が適切に弛緩できないことにあります。厚くなった左心室の壁は柔軟性が低下し、左心房からの血液を満たすために左心室が十分に弛緩したり伸びたりすることができなくなります。この異常な弛緩と伸展不能により、最終的には左心室の「上流」、つまり左心房と肺循環に血液が蓄積します。血液が逆流すると、体液が肺毛細管から肺と胸腔に押し込まれ、肺水腫と胸水を引き起こします
猫は重度になるまで、(食欲低下。呼吸困難、血栓塞栓性(血栓)などの症状)まで気が付かないことが多いです。
猫の肥大型心筋症は突然死を起こすます。厚くなった心臓の筋肉が致死性の不整脈である心室頻拍性不整脈をおこし突然死すると考えれています。突然死の発生率は当初考えられていたよりも多く。研究では、猫の突然死亡の24%が猫の肥大型心筋症によることが解っています。先ほどまで元気そうに見えた猫が突然亡くなることがあります。
3猫の肥大型心筋症の診断
猫の肥大型心筋症 の重症度は軽度から重度まであります。軽度から中等度の 肥大型心筋症 を患っている猫には、通常、臨床症状はありません。罹患した猫の 50% 未満で心雑音が聞こえます。健康な猫の約 3 分の 1 に雑音がありますので、猫の雑音を検出するだけで 肥大型心筋症を診断することはできず、雑音の発見が必ずしも心臓病を示すわけではありません。猫では、心雑音に関連する基礎的な心臓病の発生率は 30 ~ 85% です。
血液検査心臓バイオマーカーアッセイ
猫の肥大型心筋症 に対して最も優れた性能を示すバイオマーカーで、早期に見つけることができます。NT-proBNP が100 pmol/L 以上であれば 猫の肥大型心筋症 の猫を特定するのに 92% の感度と 94% の特異度で診断することができます。
心臓の X 線写真、超音波による診断
超音波検査:心室中隔および左心室自由壁の拡張期肥厚(一番拡張しているとき)が 6 mm 以上(子猫の場合は5.5mm)の場合、肥大型心筋症と診断されます。5.5 ~ 6 mm の値は疑いありで、定期的な検査が必要です。遺伝的になりやすいことがわかっている品種の場合は、現時点で陰性でも定期的に検査が必要です。
除外診断
慢性の高血圧、甲状腺機能亢進症でも 心臓の筋肉が肥大しますので、同時に検査をしておく必要があります。
猫の肥大型心筋症遺伝子検査
メインクーン ラグドールは国内で遺伝子検査が可能です。👉猫肥大型心筋症 遺伝子検査
どのくらいの数の猫が肥大型心筋症ですか(有病率)
すべての猫の15 ~ 30% に達する可能性があり、非常に高い有病率ですが多くの症例は無症状です。最も罹患率が高いのは若い雄です。メインクーン猫では、オスとメスで発生率は同じです。、オスは若い年齢でより重篤な傾向があります。
4猫の肥大型心筋症の治療法
現時点では、合併症の治療を行います。うっ血性心不全の治療(利尿薬およびACE阻害薬)。動脈血栓塞栓症の予防をおこないます
2023年に朗報がありました、平滑筋増殖抑制薬のラパマイシンが猫の肥大型心筋症進行を遅らせることが出来たという研究発表がありありました。ラパマイシンは モアイの島イースター島で発見された薬で、現在アメリカで大規模な臨床研究が行われております。
5猫の肥大型心筋症はどのくらい生きられますか?
猫の肥大型心筋を患う猫の予後は非常に多様です。一部の猫は軽度の肥大しか発症せず、心臓機能の低下がほとんどない場合がありますが、重度の病気に進行する猫も多いです。 猫の肥大型心筋 は急速に悪化する場合もあれば、数年かけてゆっくりと進行する場合もあります。重症度は何年も変化せず、突然悪化する場合があります、心臓病の臨床症状がなかったにもかかわらず突然死亡する場合があります。
軽度の猫は、何年にもわたって通常の生活を楽しむことができます。ただし、重度の肥大型心筋に罹った場合、うっ血性心不全を発症するリスクが高くなります。うっ血性心不全は進行するにつれて管理が困難になります。うっ血性心不全を患った猫の予後はよくありません。うっ血性心不全になった猫の生存期間は診断後12~18か月です。
イースター島で発見された 新薬のラパマイシンは猫の心筋症の進行を遅らせる将来有望な薬です。
6猫の肥大型心筋症の飼い主様がらやらなければいけないこと
毎日睡眠時呼吸数を測定
毎日睡眠時呼吸数を測定(通常は1分間に 30 回)してログをとってください。睡眠時呼吸数が増加したら直ぐに病院に連絡してください。
血栓症の予防
猫の肥大型心筋症の 12% は、診断から 10 年以内に 血栓症 を発症します。
心筋症の合併症である血栓症を罹患した猫 250 匹を対象とした研究では、最初の来院時に 153 匹(61.2%)が安楽死させられ、24 時間以上生存したのはわずか 27.2% でした。心筋症の進行を抑えることは出来ませんが 血栓症の発症を予防することは出来ます。心筋症と診断されたら必ず 血栓形成を軽減する薬 プロピログレル+リバーロキサバンを投与してください。特にリバロキサパン苦くなく、猫に飲ませやすい薬です。
関連NEWS
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遅延放出ラパマイシンは無症状の猫肥大型心筋症における左心室肥大の進行を阻止:RAPACAT試験の結果
2023 年 7 月 26 日オンラインで公開
猫肥大型心筋症(HCM)は依然として治療の進歩がほとんどない疾患です。ラパマイシンは mTOR 経路を調節し、げっ歯類疾患モデルにおける心肥大を予防および逆転させます。ヒト同種腎移植患者におけるその使用は、心臓壁厚の減少と関連している。私たちは、無症状の非閉塞性HCMを持つ猫の心エコー検査、生化学、およびバイオマーカー反応に対する週1回の遅延放出(DR)ラパマイシンの6か月にわたる効果を評価しました。
結論として、この研究は、DR ラパマイシンが、LV 肥大の進行を予防または遅延させる可能性がある無症候性ネコ HCM の治療の継続研究にとって有望な新薬であることを示しました