犬の熱中症
犬の熱中症 について
犬の熱中症 は死亡率(50%以上)の高い病気です、直ぐに治療が必要です。高体温は体温が 39.4°C を超える状態で熱中症と診断されます。
(車内の放置や、室内での発症が多いと思われがちですが実は過度な運動が最も危険なリスクで、原因の74.2%を占め、若い雄犬が最も危険です)
当院(救急)でも熱中症の来院は犬とお出かけした、日曜日が最も多いです。
体の一部だけを氷等で過度に冷却すると、血管が収縮して循環不全を起こしますので止めてください、常温の水で全身を冷却してください。濡れタオルで覆うことは止めてください、蒸発冷却と放射冷却を妨げてしまい逆効果です。
気候変動による世界中の猛暑は、頻度と深刻度の両方で増加すると予測されており、人間の 熱中症 による死亡は 2050 年までに 3 倍になると予測されています。犬の熱中症も同じ状況です。
私たち獣医師にはエビデンスに基づいた、予防管理を啓蒙していく義務があります。
目次
犬の熱中症の原因とリスク
・犬種別リスク
・季節リスク
・車内放置リスク
・肥満によるリスク
・季節順応リスク
・若く、運動性の高い犬のリスク
犬の熱中症 の症状
予防に何をすべきか
犬が熱中症になった時、やって頂くこと
犬の熱中症 間違った情報
・体の一部だけを氷で過度に冷却
・濡れタオルで覆う
・冷やしすぎ
犬の熱中症の原因とリスク
①運動性
高温多湿の天候、場所で運動した時
②非運動性
十分な日陰のない高温多湿な環境で屋外に放置した時
締め切った部屋の中、車の中に放置した時。
英国で犬の熱中症 1,259 例を調査研究では、
1過度の運動が最も一般的な誘因 (74.2%)
(過度な運動が最も危険なリスクです)
2次いで環境 (12.9%)、
3車内での閉じ込め (5.2%)
犬の熱中症 犬種別リスク
犬の熱中症 季節リスク
夏は日中の外出は避けてください
車内放置リスク
車内放置が危険です 「スタンフォード大学医療センターの最近の研究では、外気温に関係なく、 車内の温度は 1 時間以内に平均40 度に上昇する可能性があることが判明しました」 短時間でも犬を車の中に放置しないでください 短頭種(ペキニーズ、パグ、ラサ・アプソ、ボストン・テリアなど)は、致死的な体温上昇を引き起こす場合があります。
エビデンス👉👉熱中症と短頭種犬 – リスクは増大しますか? アンナ・エワーズ・クラーク N/A 公開日: 2022-12-22
肥満によるリスク
905,543頭の犬を対象とした英国の研究では、平均と比較して体重が重いことが最も大きな危険因子であることがわかりました。体重が15K以上になるとリスクが増加します。
季節順応リスク
体が未だ暑さに順応していない季節は特にリスクが高いです。順応とは、体が温度変化に適応する生理学的プロセスです。暑い季節に入ってから 10 ~ 20 日以内に始まり、完了するまでに 60 日以上かかることがあります。
若く、運動性の高い犬のリスク
108 頭の犬を対象としたある研究では、雄、色の濃い被毛 早く走る犬は熱中症のリスクが高いことが示されました。
英国の研究では、若い雄犬が最も危険高い集団ですが、老犬や呼吸器疾患のある犬が熱中症の可能性が高い集団であることが判明しました 犬の熱中症は繰り返し発症しますので、一度なったことのある犬は十分予防してください。
犬の熱中症 の症状
最初、苦しんでいるように見え、過剰にあえぎ、ハアハアします、ハアハアと息をすることで、粘膜に大量の空気を接触させ、蒸発させることで熱損失を発生させ体温を低下させる、犬の熱放散メカニズムですが、湿度が 80% を超えると、蒸発が妨げられてしまいます。またこの蒸発で体内の水分が失われて脱水症状から循環不全に陥ります。
次に落ち着きがなくなります。さらに高体温が進行すると、鼻や口から大量の唾液を垂らすことがあります。足元がふらつき。酸素不足が原因で、歯ぐき の色が青や紫、真っ赤に変色します。
さらに体温が上昇すると全身の細胞が死にいたります。
予防に何をすべきか
〇 被毛の厚い犬は、被毛が断熱材になるので、夏はサマーカットにしてあげてください。
〇 急に暑くなる季節、体が暑さに慣れるまで特に危険です。
〇 日陰と水に常にアクセスできるようにしてください。
〇 暑い日や湿気の多い日、気温が急激に上昇したときには、運動を避けてください。
〇 熱中症の履歴がある犬、活動量の多い若い犬は、暑い日中は激しい運動をさせないでください。
〇 健康的な体重を維持(太らせないように)をこころがけてください。
〇 短時間でも車に放置しないでください。
犬が熱中症になった時やって頂くこと
犬が熱中症になったら
日陰の涼しい環境に移動し、扇風機を当てます。
可能であれば、直腸温を測定してください。39.5度以上あれば熱中症の可能が高いです
室温の水(冷水でなく常温で)で全身を濡らし。濡れた領域に扇風機を向けると、蒸発冷却が促進されます。毛深い犬にも効果的で、安全な冷却法です。
車のエアコンを最強にして エアコンの風が当たるようにして 動物病院に搬送してください。
犬の熱中症 間違った情報
〇体の一部だけを氷で過度に冷却
体の一部だけを氷で過度に冷却するとその部位の血管だけが収縮し、さらに全身の血管が収縮して循環不全をおこし、熱を閉じ込めて、全身の冷却を阻害してしまいますのでやめて下さい。氷は人間は気持ちよく感じますが、犬は不快に感じます。
〇濡れタオルで覆う
濡れタオルで覆うことは止めてください。タオルで覆うと体表からの蒸発冷却と放射冷却を妨げてしまいます、ウエットスーツを着せるようなもので熱がこもって逆効果です。
〇冷やしすぎ
犬を冷やしすぎないでください。 体温が 39.4°C になった時点で冷やすのをやめてください。正常体温に戻ったら、濡らした部位を乾いたタオルでふき取り乾燥させてください。熱中症の犬は視床下部という体温を調節する脳の部位が機能しなくなり、自分で体温を認識できなくなってしまっていますので、下がり過ぎた体温を自分の力で上昇させることができません。熱中症の犬は体温を下がった後、低体温症になり亡くなることが多いです。
口に水を無理に押し込もうとしないでください。ただし、新鮮な冷たい水を飲めるようにしておいてください。
車内のエアコンを最低温度、最強にして、冷風が当たるようにして、できるだけ早く動物病院へ連れて行ってください。