こざわ犬猫病院

猫の伝染病

猫の伝染病 について

猫の主な感染症(猫風邪、パルボ、FeLV、エイズ、FIP)一覧と治療方法

「感染症」「伝染病」は同義で使用されることが多いですが、感染症のなかでも人から人へ伝播するのが伝染病です。今回は、「伝染病」も含めた、猫の主な「感染症」についてご紹介します。

猫の主な「感染症」と表

  • ①猫ウイルス性鼻気管炎
  • ②猫カリシウイルス感染症
  • ③猫汎白血球減少症
  • ④猫白血病ウイルス感染症
  • ⑤猫後天性免疫不全症
  • ⑥猫伝染性腹膜炎

それぞれの病気について、呼ばれ方、病名、原因、うつり方、症状、予防、治療方法を表にまとめました。

【表】猫の主な感染症(猫風邪、パルボ、FeLV、エイズ、FIP)>一覧

通称 猫風邪 猫風邪 パルボ FeLV 猫エイズ FIP
病名 猫ウイルス性鼻気管炎 猫カリシウイルス感染症 猫汎白血球減少症 猫白血病ウイルス感染症 猫後天性免疫不全症 猫伝染性腹膜炎
原因 猫ヘルペスウイルス 猫カリシウイルス 猫パルボウイルス 猫白血病ウイルス(FeLV) 猫免疫不全ウイルス 猫コロナウイルス
うつり方 発症した猫との直接接触 発症した猫との接触。感染力が高い 猫から分泌されるもの(糞便をはじめ尿や唾液、嘔吐したものなど)
食器やヒト、衣服を介してもうつる
感染した猫との接触。母猫からの感染 かみ傷による感染 感染した猫からうつる
症状 主に「風邪」の症状
鼻水・目やに・くしゃみ・咳・よだれ・発熱、食欲不振・結膜炎・呼吸困難など。
特に子猫や妊娠猫は要注意。
主に「風邪」の症状・猫ウイルス性鼻気管炎と類似の症状
口の中や舌に潰瘍ができることも
特に免疫力が弱い猫は要注意
高熱、嘔吐、時に下痢、脱水症状
白血球が極端に少なくなる
体力のない子猫は1日で死ぬことも
免疫力が低下に伴う様々な病気 免疫力が低下に伴う様々な病気 腹水・胸水の貯留、炎症による組織のかたまりの発生等
予防 ワクチン接種 ワクチン接種 ワクチン接種 ワクチン接種 予防法なし 予防法なし
治療方法 抗ウイルス剤 インターフェロン
点滴や栄養補給と、二次感染防止の抗生剤投与といった対症療法が一般的
インターフェロン(生体を守るために体内で作られるタンパク質の一種)の注射など対症療法 下痢や嘔吐などに対する対症療法 根本的な治療方法は、確立されていない。それぞれの症状にあわせての対症療法 FIPの治療にはモヌルピラビルが有効です

①猫風邪「猫ウイルス性鼻気管炎 ヘルペスウイルス」と治療法

「猫ウイルス性鼻気管炎」は「猫風邪」の一種です。人間の風邪と同じような症状、鼻水、くしゃみ、咳、発熱、食欲不振などや、結膜炎が起こることもあります。子猫や高齢の猫など、免疫力が弱い猫の場合、肺炎を起こすなど重症化する場合もあり、また、妊娠猫は流産の危険性があります。

原因としては、ウイルスに感染している猫と接触することでうつります。くしゃみによる飛沫感染、よだれや鼻水による直接感染、グルーミングやおもちゃの共有による間接的な感染などがあります。

治療方法は、抗ウイルス剤が有効です。

予防としては、毎年のワクチン接種が効果的です。

②猫風邪「猫カリシウイルス感染症」と治療法

「猫カリシウイルス感染症」も「猫風邪」の一種です。「猫ウイルス性鼻気管炎」と同様に症状としては、人間の風邪と同じような症状、鼻水、くしゃみ、咳、発熱などがあります。また、口の中や舌に潰瘍ができるという特徴もあります。猫種や年齢に限らず発症しますが、免疫力が弱い猫が特に発症しやすいです。一方健康的な猫の場合、感染しても何も症状が現れないことも多いです。

原因としては、ウイルスに感染している猫と接触することでうつります。くしゃみによる飛沫感染、よだれや鼻水による直接感染などがあります。

治療方法は、ウイルスを直接退治するのではなく、インターフェロン(生体を守るために体内で作られるタンパク質の一種)を注射することで、免疫力を高める方法がとられます。

予防としては、ワクチン接種が効果的です。室内飼いの場合は「3種混合ワクチン」、外に出る場合は「5種混合ワクチン」がおすすめです。

③パルボ「猫汎白血球減少症」と治療法

「猫汎白血球減少症」は、「猫パルボウイルス感染症」や「猫ウイルス性腸炎」とも呼ばれる病気です。猫風邪についで、猫の感染症でしばしば見られる腸炎です。

症状としては、上記のような発熱、食欲不振をはじめとする猫風邪の症状のほか、嘔吐や下痢症状があります。感染してもわかりやすい症状が特に現れず、急激に悪化することも多いです。特に子猫が感染した場合、かなり高い致死率となっている病気です。

原因となる感染経路のひとつとして、猫から分泌されるもの(糞便をはじめ尿や唾液、嘔吐したものなど)を体内に取り込んでしまうことがあげられます。食器やケージにウイルスが付着している場合があり、非常に感染力の強いウイルスです。

治療方法は、下痢や嘔吐などに対する対症療法しか方法がなく、猫の免疫力によってウイルスの排除を待ちます。白血球が減少してしまうので、輸血が必要なこともあります。

予防としては、ワクチン接種が効果的です。室内飼いの場合は「3種混合ワクチン」、外に出る場合は「5種混合ワクチン」がおすすめです。

 ④FeLV「猫白血病ウイルス感染症」と治療法

「猫白血病ウイルス感染症」は、初期症状として、発熱、元気がなくなる、リンパ節が腫れる、貧血を起こすなどの症状が見られます。リンパ節とは、免疫に関連する細胞が集まる場所です。

原因となる感染経路として、感染している猫との毛づくろい、食器の共有、喧嘩などがあげられます。

現在、根本的な治療方法は、確立されていません。それぞれの症状にあわせての対症療法となります。

予防としては、ワクチン接種が効果的です。室内飼いの場合は「3種混合ワクチン」、外に出る場合は「5種混合ワクチン」がおすすめです。

※①~④の病気は、ワクチンによって予防することができます。

⑤猫エイズ「猫後天性免疫不全症」と治療法

「猫後天性免疫不全症」、通称「猫エイズ」は、猫が免疫不全になる感染症です。

猫エイズの症状の進行は、非常にゆっくりです。段階的に進行し、初期には、発熱や下痢、リンパ節の腫大、無症状の時期を経て、その後、口内炎・歯肉炎・上部気道炎・嘔吐・下痢・細菌性皮膚炎などの免疫異常にともなう症状が現れます。末期には免疫不全に関連した症状がみられ、最終的には衰弱して死に至ります。

原因としては、ウイルスが唾液中に含まれるため、主に猫同士のけんかなどにより、感染している猫に嚙まれるなどで感染します。

現在、有効な治療方法はありません。それぞれの症状にあわせての対症療法となります。

猫エイズは、ほとんどがケンカによって感染が成立します。

予防としては感染の可能性がある猫とのケンカをするような状況を作らないことが重要です。日本では、屋外で生活する猫のウイルス保有率が高いと言われています。

 ⑥FIP「猫伝染性腹膜炎」と治療法

「猫伝染性腹膜炎」は、多くは1歳未満の子猫が発症する傾向にあります。

症状は2種類に分類されます。「ウェットタイプ」「ドライタイプ」があり、多くの猫は「ウェットタイプ」の症状が出ます。「ウェットタイプ」の特徴としては、腹水・胸水の貯留、呼吸困難があります。「ドライタイプ」は、胸水や腹水貯留はみられず、腎臓などの体の臓器のあちこちに炎症による組織のかたまりができることが特徴です。

どちらも共通する症状としては、発熱や食欲低下などがあります。

治療 人間のCOVID19の治療薬であるモヌルピラビルが効果あります。当院でも処方しております

FIP 猫伝染性腹膜炎 

 

まとめ

猫の感染症のなかには、ワクチン接種によって防ぐことのできるものがあります。

ワクチン接種を適切なタイミング行うこと、室内飼いの徹底、ストレスのかからない快適な環境を作り、普段から今回紹介したような症状がないか健康管理に気を配ることで、愛猫の健康を守ることが出来ます。

ワクチン接種について、当院の場合、3種混合ワクチン注射(ヘルペス・カリシ・パルボウイルス)、5種混合ワクチン(3種混合ワクチンに白血病ウイルス、クラミジア症の2種類が追加された効果)の接種が可能です。

愛猫の健康を守るため、他の猫ちゃんに病気をうつすリスクを回避するためにも、ワクチンの接種をぜひご検討ください。

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